日経BPのサイトから
10万円の高級炊飯器を売る(2) - ビジネス・フォアフロント - ビジネスABC

ただし、熱意は常に報われるとは限りません。むしろ空回りすることの方が多いかもしれない。事実、こちらの熱意は十分だったのに製品化を却下されてしまう経験を、私は何度となくしています。では、陽の目を見なかった製品と、今回の本炭釜とでは何が違うか。それは「どれだけ周囲を巻き込むことができたか」です。

人を巻き込む重要性、特に熱意の伝搬が大事というのはおそらく、プロジェクトという種類の行為をしてきた人々ならばわかるのではないだろうか。

前にも述べましたが、本炭釜を出そうとなったときは、社内で何度も試食会を開きました。社長にも食べてもらい「これは美味いね」と言ってもらいました。またリサーチを行ない、「これだけ売れる」「こういう波及効果もある」といった数字も用意した。そうやって少しずつ周囲を巻き込んでいき、社内にたくさんのファンをつくったのです。こうしたこともまた「熱意」という言葉に収斂していくわけですが。

上と同語反復になるけど、社内のファンを増やすことはすごく重要。
社内のコンセンサスがとれると活動がやりやすくなる。
結局空気が大事。空気ができてきた上での活動は障害が少ない。
その空気感の醸成を忘れて、つっぱしったため敵を作ることは少なくない。

ちょっとしたエピソードがあります。わが社は三菱電機のグループ会社です。だから新製品を出すか出さないかは、最終的には三菱電機が決定します。ところがわが社の社長は、三菱電機が決定する前から内釜の部材を発注していた(笑)。決定を待ってから発注していたのでは間に合わないから、という理由だったそうです。

親会社というテーマは重要で、系列会社にいる人であれば一度でも経験したことがある人々は多いと思う。
(僕もその一人)

結果的にGOサインが出たからいいようなもの、もしNGだったら大変なことですね。社長も大胆なことをしたなと思います。逆に言えば、それだけ全社一丸となって本炭釜にほれ込み、「なんとかこれを世に出そう」という機運が盛り上がった証拠でもあります。

これはやり過ぎにしろ、とにかく周囲を巻き込んだ結果こうなるのはよいことなのかもしれない。
思うに、我々はあまりにも妥協しすぎているのでないだろうか。
妥協なきこだわりを貫き通したうえで、周囲の空気感を醸成する。
これができれば本当に強いだろうなと思う。

いや、本当に。