サドルがない
「ありゃ、座るところがない」
サドルを支える棒(後にそれが、「シートポスト」と呼ばれるモノであることを知ることになる)を入れる穴がぽっかりと空いている。
「ありゃりゃ、やられた」
一人呟いてみても、どうしようもないのだが、ひとまず言ってみる。
同時に、意外と冷静に
「自転車ごと盗まれなくてよかった」
とも思う。
まぁ、そんなもんか。
僕はオトナになってしまった。
ただ、形あるものの欠落が、こういった日常のなかでぽつんと訪れることを久しぶりに実感した。
(以前は、自分の車のタイヤに穴を開けられたときに感じたんだけどさ)