3年前のある冬の晩、僕と友人はミスドで話す。

クリスマスの晩、深夜の電車に乗っていたらふと、3年前のことを思い出した。

院生時代のある深夜、金沢にあるミスタードーナツで友人と話し込んでいた。
研究に行き詰まった僕は、深夜に研究室を抜け出して息抜きというわけだ。

友人とは雑多なことをひたすら話して、気がついたら深夜の3時だった。

「今から海、行く?」

と訪ねられ、僕は頷いた。

友人の運転で深夜の8号線を走る。
そこから、能登有料道路に入る。

風は強い。途中から雨も降り出した。

僕も彼も終始無言で、雨がフロントガラスをたたく音だけが車内に響いていた。

彼が連れて行ってくれたのは、能登有料道路沿いにある車が走れる砂浜だった。

波は高かった。砂浜の端を走っているはずなのに、波が届こうとしていた。

途中、車を停めて海を眺める。
どこまでも黒い海が広がり、圧迫感が波と一緒に押し寄せてくる。

吉田秋生の"Lover's Kiss"(講談社)の中にこんな科白がある。

「真夜中の高波は人を引き込む力がある」

目の前の波は人間に根元的な恐怖を与える。
理屈ではない、目の前に広がる閉塞感。
開放感の代名詞である海が持つもう一つの意味。
波高の夜の海は閉塞感を与える。

「怖いね」

僕が言うと、友人は頷いた。

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そういえば、ここしばらく海を見ていない。
正月休みにでも行ってきますかね。
海へ。