ここは春の匂いがしないところだ

春の「すんっ」とした匂いをかぐ喜びを味わうために1年、また1年と過ごしている。
夜の阿武隈側沿いを歩きながらかぐ春の匂いは最上だった。

ひとまずの時間的制約が切れることを思いつつ楽しむ春の匂いが
今となっては限りなく懐かしい。

東京という場所は肌に触れる温度が、高くなるのに春の匂いがしない場所だ。

そもそも自分がすり減っているから匂いがしないのか、
東京という場所がそのような場所だから匂わないかどちらか分からない。

ただ生きる意欲の一つが何らかしらの力で失われることに
些末な悲しみを感じる。