新海誠「雲の向こう、約束の場所」を観る

この「雲の向こう、約束の場所」はいくつかのコアな映画館で上映された。
映画館で見ようと渋谷のシネマライズまで行ったのだが、
チケットを買う直前で急に見る気を失い、そのまま渋谷界隈を徘徊した覚えがある。

本編の方の感想は映画やDVDを見た人がたくさん書いているだろうから、
感想は述べない。

ただ、一つだけ言えるのは新海誠のほとんど病気とも言えるほどの精緻な風景描写だ。
あくまで、背景ではなく風景だというところがポイントとなる。

DVDには、新海誠のインタビューが収録されている。その中で、

「少年時代、風景で救われていた部分がある」

というコメントをしていた。
確かに少年時代から社会人になるまでの間、風景に助けられていた部分はあると思う。

例えば、小学生時代に見た、海水のため池(現在はしながわ水族館)の風景。
中学時代に見た、実家近くの竹林を抜けた場所にある空き地の青空。
大学時代に寂しくなると歩いた、阿武隈川の土手、
大学院時代に見た、晴れた日に情報研究棟から見える海。


ただ、高校時代を思い返してみると、あまり思い出となる風景が思い当たらないことに
気がつく。

人生の中で高校時代が自分にとって一番余裕がない時代だった気がする。
社会人になってどんなに時間の泥沼に陥ろうとも、高校時代のあの心の切迫感には
及ばない気がする。

切迫感しかない時代には、周囲を見る余裕をなくしてしまうのだろう。